否定する人への対処法『新しい良好な関係性を築く』

あなたは今まで相手から否定された経験はありますか?

100%の確率で答えは「ある」ではないでしょうか。

あなたを否定する相手は上司や部下、同僚、あるいは親、パートナー、友人など、様々な人から否定されるシーンは存在します。

特に、その関係が社内で上司と部下となると、毎日のことですのでストレスが溜まってしまいます。

また、リーダーが上司や部下から否定ばかりされていると、リーダーの発言力(言葉の力)が弱くなり、やがて、形だけ、肩書だけのリーダーになってしまいます。

理想の組織をつくる、理想のリーダーになる上で、否定する相手と良好な関係性を築く力は必要不可欠です。

本項では否定する上司、あるいは否定する部下への対処法を2つの側面から紹介します。

1.不幸になる対処法
2.幸せを呼び込む対処法

不幸になる対処法

あなたは否定してくる人に対してどんな感情を持つでしょうか。
おそらく、
わからず屋だな。
何も考えてない。
馬鹿げた主張だ。
などといった感情を持つのではないでしょうか。
そのような状況で多くの人がとる行動は「戦う」あるいは「泣き寝入り」です。

不幸になる対処法①「戦う」

組織に置いて戦うとは、相手を論破、屈服、失脚、左遷、解雇などです。

俺がこうなるか、あいつがこうなるか、決着つけてやるみたいなドロドロした戦い。

ドラマの世界、例えば半沢直樹であれば、主人公が勝ち、視聴者はスッキリします。
しかし、現実の世界ではそう上手くいきません。

なぜなら、勝っても負けても遺恨を残すからです。

遺恨とは「怒りと恨み」です。

もし、あなたが勝った場合は相手から恨まれます。
あなたが負けた場合は相手を恨むでしょう。

戦った二人が互いに遺恨を残したまま同じ組織にいるということは少なくありません。
当人同士は会話をしないという選択肢もあるかもしれませんが、それでも間違いなくストレスは溜まります。

周りに与える影響はどうでしょう。
二人に気を遣い仕事をしなければならず、良い影響を及ぼしません。

戦ういう対処法をとってしまった場合、遺恨を残し、常にやるかやられるか、恨み、恨まれる。
そんな不安に満ちた生活が始まります。
正に負の連鎖です。

戦うという選択肢は怒りと恨みから離れられず、決して幸せを感じられる人生にはならないのです。

不幸になる対処法②「泣き寝入り」

組織における泣き寝入りとは、諦める、妥協する、目をつむるなどです。

泣き寝入りも戦う同様、幸せを感じられる人生にはなりません。

なぜなら、泣き寝入りしても遺恨が残るからです。

否定する側は一方的に戦っているという意識で戦いに勝ったと思い込ます。
一方、否定される側は戦っている意識がないにもかかわらず、結果的に負けた状況に追い込まれます。


否定する側=戦っている=勝った
否定される側=泣き寝入り=負けた

泣き寝入りした結果、あなたの立ち位置は下がり

「あいつのせいで俺はこんなになってしまった。」
「あいつさえいなければこんな苦しい状況にはならない。」
「おのれ!あいつっ!」

となります。

泣き寝入りという選択肢は結果的に遺恨を残し幸せな人生にはならないのです。

幸せを呼び込む対処法

遺恨を残すことなく幸せを呼び込む対処法があります。

その対処法が「新しい良好な関係性を築く」という方法です。

この方法を取り入れることで、あなたも、相手も、そして周囲も幸せで働きやすい環境をつくることができます。

幸せを呼び込む対処法「新しい良好な関係性を築く」

自分から

新しい関係性を築くには、まず自分からという気持ちが重要です。

相手が否定してくる場合、たいてい自分も相手の事を否定しています。

例えば、相手があなたのことを「あいつはダメな奴だ」や「あいつは全く考えていない」などと否定したとします。

その場合、ほぼ例外なく、あなたも否定してくる相手に対して「あいつは自分のことを分かっていない」などと相手を否定しています。

「タマゴが先かニワトリが先か」
どちらが先に否定したかは分かりませんが、お互いに否定し合っている状態になっているでしょう。

そのような状態を改善して新しい良好な関係性を築くには、どちらかが先に動かなくてはなりません。

では、どちらが先に動くか。

答えは「あなた」です。

あなたがリーダーで、理想の組織をつくることを目的とした場合、あなたが相手よりも上の立場であっても下の立場であっても、あなたがその状況を変えるきっかけをつくる必要があるのです。

人間は元来分かり合えないもの

新しい良好な関係性を築くきっかけをつくるにあたり、「人間は元来、分かり合えないもの」という前提にたつことが大切です。

なぜなら、人間は生まれた環境、文化、経験、学問、歴史が一人ひとり違うからです。

自分が見たもの、聴いたもの、学んだもの、そんな経験の上に、一人ひとりが地球上に存在します。

わたしたちは一人として同じ環境で育ち現在(いま)を生きている人はいません。
昭和に生まれた人、平成に生れた人、大学で学んだ人、大学で学んでいない人、南国で生れた人、北国で生れた人。。。

そんな多様な人が存在する社会において100%分かり合えるということはあり得ないということをまずは知ってください。

人間の本性は「自分が中心」

また、人間の本性は我利我利亡者(がりがりもうじゃ)です。
我利我利亡者とは「自分さえよければ他人なんてどうなってもよい」という「自分中心」の思想、本能です。

知識編第1章「脳を知る」で解説していますが、動物は自分中心の生き方をしなくては生命の危機にさらされます。

人間が動物である以上、図のように、まずは生命を維持するという思想を潜在的に持っていますので「自分が中心」だという思想、本能は変えられません。


しかし、人間は他の動物(爬虫類や哺乳類)とは異なり、人間脳を保有しています。

人間脳は、未来的な思考ができることで目的意識が働きます。
目の前の本能の支配から逃れ、未来のために行動をしようとします。

人間脳をフルに稼働させ、相手のこと、心、気持ちを分かろうとしてください。

具体的手法

あなたは、あなたのことや気持ちを分かってくれる人が身近に存在したら、心強いあるいは心地良いと感じませんか?

その人の為だったら、わたしは協力したいと感じるはずです。

否定してくる相手に対しては、あなたが心強いあるいは心地よい存在になれば良いのです。

では、具体的な手法を紹介します。

①【相手の立場を想像する】

まずは、以下の4点を相手の立場に立って想像してみてください。

①困っていること(悩んでいること)
②プレッシャー
③焦り 
④怯え 

想像するにあたって参考となるアンケート結果があります。

【管理職として悩んでいることランキングTOP10】

1位 部下の育成
2位 チーム・部門の運営
3位 部門の成果達成
4位 部下とのコミュニケーション
5位 人事評価
6位 会社の業績・将来
7位 自身の専門的能力向上
8位 部門・個人目標の設定
9位 自分の将来
10位 上司とのコミュニケーション

上段を参考にしながら、あなたを否定する人の行動に当てはめ、もう一度、想像してみてください。

すると意外なことを発見できると思います。

それは、

「自分と同じじゃないか?」

実は、否定してくる相手もあなたと同じようなことで困ったり、プレッシャーを感じたり、焦っていたり、怯えていたりしています。

否定してくる相手も、あなたも「より良い組織をつくりたい」「部門の成果を達成させたい」などの目的は一緒なのです。

では、なぜ、相手はなぜあなたを否定するのでしょうか。

それは、目的を達成させるための手法が異なっているからなのです。

②【目的は一緒だと認識する】

例えば、上司部下の関係で「一生に1回は富士山に登りたい」という夢を持った二人がいたとします。

そして、「いつ、どのルートで、ご来光は見るか」などを話し合いました。

※今回、あなたは部下Bさんの立場でイメージしてみてください。

体力に自信がある上司Aさんは

・来月には登りたい
・せっかく行くなら一番きついルート
・ご来光は見なくてもいい

と言い

慎重派で体力に自信のない部下Bさん(あなた)は

・体力づくりの時間がほしいから早くても登るのは半年後
・登山初心者だから易しいルート
・せっかく富士山に登るならご来光はみたい

と言いました。

部下Bさん(あなた)の意見に対し、
もしも上司のAさんが

・お前そんなに体力無いの?
・なにもエベレストに登ると言ってるわけではないから、そんなに鍛えなくてもいいよ
・きついルートだって問題なし

と言ってしまったなら、
おそらく部下Bさん(あなた)は

・Aさんは体力に自信があるからいいですけど、わたしには無理
・しかも一番きついルートなんて絶対無理
・Aさんは登山ナメすぎ!
・この上司とは一緒に登れない

と、言葉に出すかは別として、少なくとも心の中ではその様に思うでしょう。

富士山に登りたいという目的は一致してるはずの二人が手法を議論すると否定のし合いが生まれてしまいます。

会社組織でも同じです。
「目標を達成させる」という目的は一緒でも、どのように達成させるかという手法は100人いたら100通り考え方が存在します。

では、部下Bさん(あなた)の立場で、上司Aさんとの関係性を悪くすることなく目的を達成させる為に対処するとしたら、どうすれば良いのでしょうか。

③手法を絞り、相手に歩み寄る

答えは、「手法を絞り、相手に歩み寄る」です。

「手法を絞る」から解説していきます。

・手法を絞る

今回の事例を整理し表にまとめます。


では、質問です。

今回の事例で、富士山に登るという目的を達成するために、今すべきこと、解決しなければならないことはなんでしょうか。

・ご来光を見る、見ないですか?
・ルートを決めることですか?
・いつ登るかを決めることですか?

答えは「いつ登るか」を決めることです。

なぜなら、二人が一緒に目的を達成させる為には、登頂するための体力が必要だからです。

特に部下Bさん(あなた)が富士山に登れるくらいの体力をつけられれば、ルートは上司Aさんが主張するきついルートに挑戦するという選択肢も生まれ、ご来光は部下Bさん(あなた)の意見を取り入れてもらうというやり取りを登頂するまでに話し合うことが出来ます。

主張が異なる3つの手法を同時に議論してしまうと、否定度合いは大きくなり、二人の関係性は悪化します。
目的を達成させる為に、今すべきこと、解決しなくてはならないことに手法を絞り込むことが重要です。

歩み寄り

互いを否定し合ってしまっている上司Aさんと部下Bさん(あなた)。

この状況を改善するには部下Bさん(あなた)から相手に歩み寄ることが必要です。
(上司Aさんが改善に向けた行動をとることは私の経験上95%ありません。もし上司Aさんが改善に向けた行動をとる人ならば、そもそも否定のし合いはおきませんし、理想のリーダー像に近い人でしょう。)

では、どのように歩み寄るか。

・目的が一緒だということを再度共有する(富士山に登る)
・あなた(部下Bさん)の立ち位置を下げる(体力がない)
・上司Aさんの強みを称賛する(体力がある)
・絞り込んだ手法に限定し解決策を提案する(登る時期を遅らせる)
・上司Aさんの助けを求める(体力づくりの方法を教えてもらう)
・途中経過を報告する(コミュニケーションの場をつくる)
・感謝

言葉にすると以下の感じです。
今度はあなたが上司Aさんの立場で読んでみてください。

Aさん、失礼します。
少々お時間よろしいでしょうか。
先日、お話しさせていただいた富士山の件です。
あの後、私、色々考えましたが、やっぱり富士山に登りたいです。
ですが、いまの私は本当に体力がないです。
これまで、運動をしてこなかったので同年代の方と比較したら最低ランクだと思います。
もしかしたら、もっと上の年代の方と比較しても最低ランクかもしれません。
恥ずかしいです。
Aさんのように学生時代から運動をして体力がある人が本当に羨ましいです。
そこで相談です。
わたしも早く富士山に登りたいので、3か月で体力をつけようと本気で思っています。
3か月後、一緒に登っていただけませんでしょうか。
もしよろしければ、Aさんがやってきた体力のつけ方教えてください。
教えてもらえれば本当に心強いです。
定期的にどのくらい体力がついたかを定期的に報告させていただきます。
あと、体力をつけるのと同時に富士山登山に関する知識も勉強しておきます。
ありがとうございました。

いかがでしょうか。

上司Aさんの立場で聞いた時少なくとも悪い気はしないはずです。
もしかしたら上司Aさんも体力に不安を感じていたかもしれません。

ポイントはあなたの立場を下げて、相手の立場を上げること。
一緒に目的を達成させたいという気持ちを前面に出すことです。

以降は当然ですがあなたが提案したことを全力で取り組みコミュニケーションの時間を確保し良好な関係性を築いていくことが重要です。

まとめ

本項では、否定する人への対処法「新しい関係性を築く」というテーマでお伝えしました。

実際の現場では事例のように簡単にいかないケースが多くありますが、まずは相手の立場に立ち、あなたから歩み寄ってください。

そうすることで、相手もあなたの立場に立ってくれ歩み寄ってきてくれます。

そこで新しい良好か関係性を築き組織力を高めていってください。

最後に、この言葉で締めくくります。

~呼べば呼ぶ、呼ばねば呼ばぬ山彦よ。まず笑顔せよ皆笑顔する。~