心理学「脳」を知る 哺乳類脳(仲間意識)

前項に引き続き「脳の三位一体説」から哺乳類脳を解説していきます。

脳の三位一体説の概要

「人間の脳は三階層で成り立ち、役割の異なる3つの脳が一体となり機能している」

三階層【3つの脳】

脳の三階層とは
①爬虫類脳(ワニ)=原始的爬虫類
②哺乳類脳(ウマ)=旧型哺乳類
③人間=新型哺乳類
です。


爬虫類脳を読んでいない方はこちらから確認してください。

哺乳類脳

哺乳類脳の役割

哺乳類脳は「感情」を司っています。
感情とは快・不快・恐怖・喜び・怒り・嫌悪・愛情などです。

ウマやイヌなどの哺乳類は爬虫類と比べて感情が豊かですよね。

例えば、母性本能です。
ウマの親子の母親が必死に子供を守ろうとする光景はよくテレビでも見られます。
わたし達が、好き、嫌い、気持ち悪い、かわいいなどと感じることができるのは哺乳類脳のおかけです。

哺乳類脳を一言でいうと「感じるための脳」です。

もし、私たちが哺乳類脳を持っていなかったら、バンジージャンプも怖くありません。
なぜなら、どんなに高いところから下を見下ろしても恐怖を感じないからです。
哺乳類脳が恐怖という感情を感じることで命を守ることにもつながっています。

哺乳類脳の特徴

哺乳類脳の大きな特徴は3つです。

①衝動的
②群れを成す(仲間と協同)
③従属関係(上下関係)

それぞれ解説していきます。

衝動的

哺乳類脳が感じる感情は衝動的です。

衝動的とは
「心をつき動かされるままに、善悪などの判断もせず行動に移してしまう様」
つまり本能的に生れる感情です。

時間軸で現すと「その瞬間」。
ポイントは過去や未来は含まれないという点。

例えば、
赤ちゃんを見た時の「かわいい」
高いところから下を見下ろした時の「怖い」
湿度が高い時の「不快感」
など。

これらの感情は意識することなく、その瞬間、本能的に生れてくる感情です。

わたし達人間が第一印象で人を判断する傾向にあるのは哺乳類脳に影響を受けているからなのですね。

群れを成す(仲間との協同)

哺乳類脳のもう一つの特徴は「群れを成す」です。

群れを成す目的は3つ。

①食料の確保
②繁殖(自分と近い遺伝子の継承)
③外敵からの防御が効率的

これら3つの目的はいずれも、死の回避と子孫を残す=生き続ける為です。

爬虫類同様、哺乳類もまたその基盤にあるのは「生きること」と「子孫を残すこと」です。

ただし、哺乳類が爬虫類と違うのは愛情などの情動を伴う点です。
つまり、「仲間と協同した種の依存」です。

例えば、非力な赤ちゃんを保護したいという母性愛や仲間と協同しながらの育児などが哺乳類には存在します。

一方、爬虫類は卵を生んでしまえば子育てはおしまいで、母性や育児は存在しません。

哺乳類脳は単なる生命維持が目的の爬虫類脳よりも一歩進化した仲間と関わりを持てる脳なのです。

私たちがコミュニティを形成するのは、哺乳類脳の群れを成すという特徴が影響していますね。

従属関係(上下関係)

群れを成すということはリーダーが存在するということ。
なぜなら、誰かが行動を起こし、それに賛同する者がいないと群れ(組織)は形成されないからです。

では、どんな者がリーダーになるのか。
それは、目的を達成させる能力が高い者です。
哺乳類が群れる目的は、死の回避と子孫を残す確率を高めること。
その能力が高い者がリーダーとなり、そのリーダー下に賛同者が集まります。
賛同者たちはリーダーの下にいることで自分たちの目的を達成させることができるからです。

このような流れで哺乳類の群れは形成され、同時に群れの中に従属関係が生れます。
これが、哺乳類の特徴である従属関係です。

一方、爬虫類はワニ等の一部の動物を除き、群れを形成することはありませんので原則、従属関係は存在しません。
爬虫類にあるのは殺るか殺られるかの一方的な支配です。

哺乳類脳に影響を受ける人間の行動・思考

哺乳類脳に影響を受ける人間の行動・思考は大項目では1つ、それに関連する項目で4つです。

【大項目】
『コミュニティをつくる』

【小項目】
①『孤独を嫌う』
②『人目を気にする』
③『自分を大きく見せる』
④『権威に弱い』

コミュニティをつくる(孤独を嫌う)

哺乳類脳に最も影響を受けている人間の行動は「コミュニティをつくる」です。

太古の昔、わたし達人間も群れを成して生きていました。
その数は150人から200人と言われています。
今と違い、コンビニなどはなく、周りには猛獣がうようよいて一人で生きていくのは困難な時代でした。
この困難な時代を生き抜く為に太古の人たちは群れを形成し生活していました。
群れを形成することで、食料の確保や身の安全を守れる可能性が高くなったからです。
つまり、群れを成すことで「死を回避し、子孫を残せた」ということです。

この名残が私たちにも受け継がれ、現代でもコミュニティをつくたがる傾向にあるのです。

また、人が孤独を嫌う傾向にあるのもこのコミュニティをつくることが影響しています。
前述した通り、猛獣がうようよいる世界で、もし群れから除け者にされ一人になってしまったらどうなるでしょうか。
死んでしまう確率が高まってしまいます。
つまり、一人になるということは「死」を意味していたのです。

これが、わたし達人間が孤独を嫌う理由です。

では次に、コニュニティをつくる=孤独を嫌うことに関連する人間の行動を3つ紹介します。

①人目を気にする
②自分を大きく見せる(マウントをとる)
③権威に弱い

①人目を気にする

人の目を気にするのは「目立ちすぎると叩かれる(嫌われる)から」。

あなたの組織の中に目立った人がいた時、なんか不快だなぁと感じた経験はないでしょうか。
あるいは、あなたが目立った時叩かれた(嫌われた)経験はないでしょうか。

これは、哺乳類脳が本能的且つ衝動的に感じる感情に起因しています。

ワイドショーなどで有名人が叩かれるのを見てしまうのもこれが要因です。

コミュニティの中で目立ちすぎると嫌われてしまい一人になってしまう可能性があるため、ひとは人目を気にするのです。
つまり、人目を気にするというのは一人になる=危険を回避するための行動なのです。

②自分を大きく見せる(マウントをとる)

自分を大きく見せる理由は自分の弱みを隠すため。

例えば、猟に出かけても獲物を獲れない人がいたとします。
もし、この事実を仲間に知られてしまったらどうなるでしょうか。
不要な人間だと思われ群れから除け者にされ一人になってしまいます。

また、自分を大きく見せることは、異性へのアピールもあります。
これは確実に遺伝子を残すことにも関連します。
現代でいうと、男性が収入に見合わないブランド品や高級品を身に着け合コンに参加するなどでしょうか。

ちなみに、この自分を大きく見せるという行動は前述の②人目を気にすると相反します。
②の人目を気にする行動は群れの中で比較的上位に位置する人が行い、③自分を大きく見せる行動は下位の人がとる傾向にあります。
「能ある鷹は爪を隠す」でしょうか。

③権威に弱い

権威に弱いのは自分より強い者に自分を守ってもらうため。

猛獣がうようよいる世界で猛獣に勝てないとしたら、あなたはどんな行動をとるでしょうか。
自分より強い物に守ってもらうという行動をとるのではないでしょうか。

権威に弱い=権威に従うというのは危険を回避するための行動なのです。

まとめ

哺乳類脳は「衝動的な感情」を司っており、ここで生まれる感情からコミュニティを形成する特徴があります。
コミュニティを形成するということはリーダーと賛同する者とのが存在し、そこに従属関係とコミュニティの中で生き抜く行動も生れます。
これにより、わたし達は人目を気にしたり、自分を大きく見せるなど組織のなかで重要な存在でいたいという欲求が生れてるのです。
これらの欲求はマズローの5段階欲求の「安全」「所属と愛」「承認」に近しいものです。

次は人間脳です。

人間脳は爬虫類脳、哺乳類脳にはない未来を考えられる脳です。

では、人間脳の役割、特徴を見ていきましょう。