心理学「脳」を知る 人間脳(目的意識)
前項に引き続き「脳の三位一体説」から人間脳を解説していきます。
脳の三位一体説の概要
「人間の脳は三階層で成り立ち、役割の異なる3つの脳が一体となり機能している」
三階層【3つの脳】
脳の三階層とは
①爬虫類脳(ワニ)=原始的爬虫類
②哺乳類脳(ウマ)=旧型哺乳類
③人間=新型哺乳類
です。
爬虫類脳、哺乳類脳を読んでいない方はこちらから確認してください。
人間脳
人間脳の役割
人間脳は「思考」を司っています。
「思考」とは人間の知的作用の総称。
具体的には言語、記憶、知能、創造、倫理、学習などがそれにあたります。
例えば、日常の会話も過去の体験など、何らかの考えを言語という言葉に変換し成り立っています。
人間脳を一言で現すならば「考える」脳です。
この「考える」という役割の脳を保有した動物は唯一、人間だけなのです。
もし、爬虫類や哺乳類が人間脳のような考える能力を保有していたら、人間は弱肉強食の世界では生きていくは出来なかったのでしょう。
なぜなら、仮にワニやライオンが自ら考え道具を使った食料の確保をしたならば、私たち人間は勝てないからです。
ワニやライオンなどの動物と人間では圧倒的なパワー、攻撃力が異なりますよね。
逆にいうと、人間は人間脳を保有していたから食物連鎖の頂点に立てて、現在でも生き延びているという事になります。
人間脳に感謝です。
人間脳の特徴
人間脳の大きな特徴は2つです。
①顕在意識(有意識)
②未来志向
顕在意識(有意識)
爬虫類脳や哺乳類脳は潜在意識(無意識、本能)という特徴がありましたが、人間脳は顕在意識(有意識)という特徴があります。
顕在意識とは
「心中に明瞭に自覚されている意識」
です。
水泳を例にとってみていきましょう。
陸上で行われている呼吸は当たり前ですが、潜在意識(無意識)ですよね。
「よしっ!呼吸するぞっ!」て毎回呼吸をしている人はいないですもんね。
これに対し、水泳をしている時の息継ぎは顕在意識(有意識)です。
水泳の息継ぎは呼吸のできない水の中でどうやったら息ができるかを考え学習した結果、生み出された呼吸方です。
このように人間脳は目的を達成させるために考えることが出来る特徴があります。
言い換えるならば目的意識を持った脳といえます。
未来志向
人間脳のもう一つの特徴は過去の経験を前提とした「未来思考」です。
爬虫類脳、哺乳類脳はその瞬間の行動や衝動的な感情という特徴をもっていましたが、人間脳は未来を思考することができるという特徴をもっています。
つまり、時間軸に過去や未来が含まれるという事です。
時間軸に過去が含まれるのは、過去の経験無くして未来を考えることが出来ないからです。
例えば、人間が老後に安定した暮らしをしたいと考え、コツコツ貯金をするという行動は目的意識をもった未来思考から生れています。
この能力は爬虫類、哺乳類には存在しません。
獲物を確保したワニが10日分に分けて食べようとする行動は見たことないですもんね。
人間脳に影響を受ける人間の行動・思考・欲求
人間脳に影響を受ける人間の行動・思考は「成長したい」という欲求です。
この欲求は人間脳が持つ特徴「顕在意識」と「未来志向」による内省能力から生れてきます。
内省能力とは自分自身の行動や考えをかえりみる力です。
つまり、自分の能力を発揮し自分が成りうる最高のものになりたいという欲求です。
ひとによって方向性が異なりますが、具体的には
・スポーツや音楽の世界で成功したい
・社長になって社員を幸せにしたい
日常的なところでは
・理想の家庭を築きたい
・ダイエットをしたい
などがこれにあたります。
この「成長したい」という欲求は全ての動物の中で人間のみが保有する思考・欲求です。
このように人間脳は「成長したい」など未来を思考することが出来る進化したありがたい脳なのですが、思考できる故にネガティブな未来も思考してしまいます。
そのネガティブな思考から生れるのが「不安」や「ストレス」です。
この「不安」や「ストレス」については知識編第2章で詳しく解説していきます。
人間脳と爬虫類脳、哺乳類脳の強さ比較
人間の脳は人間脳、哺乳類、爬虫類脳が三位一体となり機能しています。
各脳が単独で機能することはありません。
しかし、各脳の強さ(機能する力)については均等ではありません。
では、どの脳が強いのでしょうか。
人間脳は最弱
結論、人間脳は最弱です。
強さを比較するとこうなります。
爬虫類脳>哺乳類脳>人間脳
爬虫類脳が一番強く、二番目が哺乳類脳、そして三番目が人間脳です。
その理由は潜在意識(無意識)と顕在意識(有意識)の強さに関連します。
潜在意識と顕在意識の強さ
これまで解説してきた通り、
爬虫類脳、哺乳類脳は潜在意識
人間脳は顕在意識
という特徴を持っています。
改めて、
潜在意識とは、「自覚することなく活動する意識」
顕在意識とは「心中に明瞭に自覚されている意識」
です。
では、この潜在意識と顕在意識、私たちの行動にどちらが大きく影響を及ぼしているのでしょうか。
正確なデータはありませんが、これまでの研究によると、その影響の度合いは
潜在意識95%、顕在意識5%
と言われています。
処理能力の差は顕在意識に対して潜在意識が20000倍。
圧倒的に潜在意識が顕在意識を上回っています。
なぜ、このように潜在意識が圧倒的に強いのか。
それは私たち人間を含む動物が生命維持を最優先にしているからです。
つまり、
「いのちが命」
だからです。
どういうことかというと、例えば、
もし、あなたが次の2つのどちらかを選択しなくてはならないとしたら、どちらを選びますか?
①呼吸
②お金持ちになるという夢
間違いなく呼吸ですよね。
呼吸をしなくては死んでしまいますからね。
このように、動物にとって一番大切な生命維持を目的とする潜在意識に、成長したいという欲求を持つ顕在意識は勝てないのです。
三日坊主で終わる仕組み
わたし達人間は新しいことをやろうとしても三日坊主で終わる傾向が強いですよね。
この原因は顕在意識が潜在意識に負けてしまうからです。
例えばダイエット。
ある女性が、最近少し太ってきたので健康の為に毎日ジョギングをして、食事もヘルシーな野菜中心にしようと考えたとします。
健康の為にダイエットをするというのが人間脳、顕在意識から生まれる成長したいという欲求です。
これに対し、生命維持が目的で現状維持という特徴があり安全でいたいという欲求の爬虫類脳は以下のように人間脳に働きかけます。
「外に出ると危ないよ。」
「家の中の方が安全だよ。」
「これまで通り、肉を食べよう。」
「肉はおいしいよ。」
「新しいことしなくていいよ。」
このように潜在意識が現状維持=新しいことを嫌う為、人間は三日坊主で終わってしまう傾向にあるのです。
とはいえ、三日坊主では終わらせずに目標を達成させたいですよね。
お任せください。
方法はあります。
それは「顕在意識」を「潜在意識」に刷り込む(習慣化)という方法です。
詳しくは本書の中で解説していきます。
心理学「脳を知る」まとめ
脳の三位一体説をまとめていきましょう。
各脳の役割
爬虫類脳:生命維持(心拍、呼吸、体温調節、危険などに対する反射行動)
哺乳類脳:感情(快・不快・恐怖・喜び・怒り・嫌悪・愛情など情動的感情)
人間脳:思考(言語、記憶、知能、創造、倫理、学習などの思考)
各脳の特徴
爬虫類脳:潜在意識(無意識・本能)、防衛、攻撃・侵略、現状維持
哺乳類脳:潜在意識(衝動的)、群れを成す、従属関係
人間脳:顕在意識(有意識)、未来志向
各脳から影響を受ける人間の行動、思考、欲求
爬虫類脳:自己中心的(我利我利亡者)、ひきこもり、面倒くさがり、権力に弱い、不貞行為
哺乳類脳:大項目『コミュニティをつくる』小項目①『孤独を嫌う』②『人目を気にする』③『自分を大きく見せる』④『権威に弱い』
人間脳:成長したい
各脳の強さ比較
爬虫類脳>哺乳類脳>人間脳
理由は潜在意識と顕在意識の強さに関連
潜在意識と顕在意識の強さ
【影響の度合い】
潜在意識95%、顕在意識5%
【処理能力の差】
顕在意識に対して潜在意識が20000倍
脳の三位一体説概略図
人間の言動、行動は全て脳が司っています。
「脳」の知識を得ずに理想のリーダーになる、あるいは理想の組織をつくるということは運転免許を持たずに車を運転することと同じです。
本書はこの心理学「脳を知る」を起点に構成されていますので理解しておいてください。
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