【番外編】なぜアニメ「ワンピース」は爆発的なヒットを生んだのか?心理学「脳」の観点から人気の理由を解説
ワンピースが人気の理由
「脳の三位一体説」の各欲求に合致している
世界中で爆発的なヒットを生み出しているアニメ「ワンピース」が人気の理由を心理学の観点から分析していきます。
結論を先に述べるならば、ワンピースは脳の三位一体説の心理的欲求に見事に合致しているからです。
原作者の尾田栄一郎さんが心理学を意識して制作しているかは定かではありませんが、ワンピースのストーリーは心理学の観点でしっかりと分析され、その要素を見事に落とし込んでいることで爆発的なヒットを生み出していると考えられます。
逆にいうと、心理学「脳」を知るの三位一体脳説を学びマーケティングに活用することで爆発的なコンテンツを生み出すということも可能だということになります。
組織のマーケティングにどう活用するかは改めて解説するとして、さっそくワンピースが人気の理由を詳しく見ていきましょう。
脳の三位一体説とは
まずは脳の三位一体説を復習しておきましょう。
【脳の三位一体説の概要】
「人間の脳は三階層で成り立ち、役割の異なる3つの脳が一体となり機能している」
三階層【3つの脳】
脳の三階層とは
①爬虫類脳(ワニ)=原始的爬虫類
②哺乳類脳(ウマ)=旧型哺乳類
③人間=新型哺乳類
です。
爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳を読んでいない方はこちらから確認してください。
各脳の役割、特徴、欲求と合致
前段でも述べたように、ワンピースは脳の三位一体説の心理的欲求に合致しています。
では、具体的にワンピースに登場するキャラクターやストーリーが各脳の役割、特徴とその欲求にどう働きかけているのかを見ていきましょう。
人間脳への働きかけ
人間脳の特徴は目的意識と未来志向からくる成長したいという欲求でした。
ワンピース、麦わらの一味はそれぞれしっかりとした個人の目標を持っています。
各キャラクターの目標を見てみましょう。
ルフィ:海賊王になる
ゾロ:世界一の大剣豪になる
サンジ:オールブルーを発見する
ナミ:世界地図(海図)を書く
ウソップ:勇敢なる海の戦士になる
チョッパー:全てを直す万能薬になる
ロビン:真の歴史を知る(ラフテルに導く)
フランキー:自分の造った船でラフテルに行く
ブルック:ラブーンと再会する
このように、全てのキャラクターが明確な目標を掲げています。
更に注目すべきはその目標=ゴールが長期的という点です。
他のアニメでスポーツをテーマにし成長したいという欲求を描いた作品もありますが、その目標=ゴールが短期的です。
ワンピースはこの長期的な目標を掲げていることから壮大なストーリーを描くことが可能となり100巻を超えても読者を飽きさせない人気を生み出しています。
また、全ての人間は「成長したい」という欲求をもっていますので、これらのキャラクターの成長していく姿に共感し憧れを抱き、自分自信をキャラクターに置き換え投影しているのもワンピースの世界に引き込まれる理由のひとつです。
哺乳類脳への働きかけ
つづいて、哺乳類脳の役割、特徴からくる欲求にどう合致しているのを見ていきます。
哺乳類脳の役割は「感情」を司ること。
特徴は仲間意識。
欲求は「仲間がほしい」でした。
感情への働きかけ
まずは哺乳類脳の役割「感情」にどう働きかけているのかを見ていきましょう。
感情とは喜び、怒り、悲しみなどの心の動きですが、ワンピースは特に悲しみから感動を生み出し読者を虜にしているように感じます。
具体的には、各キャラクターが過去に苦しい、悲しい、切ない体験を経験しているという点です。
各キャラクターの体験をまとめてみます。
※ネタバレになる恐れがある為、ポイントのみ記載します。
ルフィ:山賊からシャンクに命を助けられるものの、その過程でシャンクスが腕を失うという悲しみ。エースの死という悲しみ
ゾロ:幼少期に一度も勝てなかった「くいな」の死という悲しみ
サンジ:育ての親ゼフに命を助けられるものの、その過程でゼフは片足を失うという悲しみ
ナミ:育ての親ベルメールが自分の目の前で殺されるという悲しみ
ウソップ:幼少期に病弱な母親を亡くすという悲しみ
チョッパー:唯一心の通じ合えたドクターヒルルクの死という悲しみ
ロビン:オハラにおけるバスターコールで母親を含む全てを失った悲しみ
フランキー:育ての親トムの死という悲しみ
ブルック:所属するルンバー海賊団全員の死とラブーンとの別れという悲しみ
麦わらの一味以外にも、トラファルガーロー、ハンコックなどもそれぞれ壮絶な悲しい体験が描かれています。
これらの悲しい体験が哺乳類脳の役割である感情を揺さぶり涙を誘っています。加えて、その体験から各キャラクターが成長していく様に読者の感動を生み出しています。
仲間意識への働きかけ
続いて、哺乳類脳の特徴「仲間意識」と「仲間が欲しいという欲求」への働きかけです。
これは、ズバリ海賊という組織から成り立つ仲間が存在するという点です。
ワンピースに登場するキャラクターはそのほとんどに仲間が存在します。
わたし達人間は哺乳類脳の影響で無意識にコミュニティを形成したい、仲間が欲しいという欲求を持っていますので読者は無意識にワンピースの世界に引き込まれるのです。
爬虫類脳への働きかけ
最後に爬虫類脳への働きかけを見ていきましょう。
爬虫類脳の役割は生命維持。
欲求は食欲、睡眠欲、性欲など。
死を意識
ワンピースが爬虫類脳に最も影響を与えているのは「死」です。
なぜ「[死」が爬虫類脳に影響を与えているのかというと、爬虫類脳は「生きるための脳」で、「生きる」ということは逆に言うと常に死を意識しているという事になるからです。
死を意識させるシーンとしては大きく2つ。
ひとつは、家族や仲間の死。
もうひとつは、戦闘シーンです。
家族や仲間の死はエースの死、ナミの育ての親ベルメールの死、オハラのバスターコール、おでんの死など。
戦闘シーンでは、瀕死の状態から何度も立ち上がり戦い続ける様です。
爬虫類脳はわたし達人間を含む動物にとって最も重要な生命維持という役割を担っていますので、「死」を意識させることで読者を引き込んでいます。
爬虫類脳の欲
また、爬虫類脳の欲求である「食欲」「睡眠欲」「性欲」にもしっかりと働きかけています。
そのシーンとは。
食欲:ルフィがおなか一杯に食べるシーンや食料を確保するシーン、宴のシーンなど。
睡眠欲:ルフィやゾロが爆睡しているシーンや戦闘後、麦わらの一味が疲れて睡眠していいるシーンなど。
性欲:サンジが女性を好む性格であることやハンコック、ナミ、ロビンなど女性キャラクターが美しく、セクシーな衣装をまとっていること。
無意識に刷り込む
爬虫類脳は無意識に働き続ける脳です。
「生きる」ということや食欲、睡眠欲、性欲はわたし達人間を含む動物が無意識に持っている意識、欲求です。
ワンピースの「死」を意識させるシーンや食べる、寝るなどのシーンは爬虫類脳が持つ特徴の無意識に対して、無意識に刷り込んでいるのです。
まとめ
ワンピースが人間の各脳にどう影響を与えるのかまとめます。
人間脳=成長したい=各キャラクターが明確で長期的な目標を持っている。
哺乳類脳=感情・仲間が欲しい=各キャラクターが壮絶な悲しい体験をしている。海賊という組織から成り立つ仲間の存在。
爬虫類脳=生命維持、原始的欲求(食欲、睡眠欲、性欲)=「死」を意識させている。食欲、睡眠欲、性欲のシーンが描かれている。
ロビンの名言「生きたい」は一言で全ての脳に影響を与えている
ここまでワンピースのストーリーは脳の三位一体説の各脳に影響を与えていると解説してきましたが、それを一言で表現している、あるセリフを紹介します。
それは、ロビンの名言「生きたい」です。
この「生きたい」こそ、ワンピースが脳の三位一体説の各脳に影響を与えている象徴といえます。
オハラのバスターコールで全てを失い、幼少時代から一人きりで生き延びることだけが目的だったロビンが、エニエスロビーで麦わらの一味に発した言葉、
「生きたい!わたしも一緒に海に連れてって!」
このセリフの裏側には、生命維持、仲間が欲しい、成長したいというメッセージが織り込まれています。
生命維持(爬虫類脳)=「生きたい」
仲間が欲しい(哺乳類脳)=「わたしも一緒に」(麦わらの一味と)
成長したい(人間脳)=「海に連れてって」(真の歴史を知る)
このように、ワンピースは人間脳、哺乳類脳、爬虫類脳の各脳全てに対して見事に影響を与えています。
これが、ワンピースが世界的な爆発的ヒットを生み出した理由なのです。
人気のアニメ、ドラマ、映画は各脳に影響を与えている
ちなみに、これまで人気を博したアニメやドラマ、映画も各脳に影響を与えているものが多いです。
例えば、コードブルー。
救命救急という死に直面する現場が舞台、研修生という仲間の存在、研修生から医師になるという成長したい意欲がしっかりと描かれています。
医療系のドラマや映画は「死」「仲間」「成長」を意識させる設定が比較的容易に可能なことからヒット生み出しやすいと感じます。
その他、ヒットを生み出しやすい設定としては「学校」「警察」「スポーツ」系です。
逆に、その設定が難しいものはコメディなどのお笑い系でしょう。
なぜなら、お笑いは哺乳類脳の感情だけに絞られた設定となってしまうからです。
いかがでしたでしょうか。
爆発的なヒットを生み出す人気のアニメやドラマには心理学という観点からも明確な理由が存在することをお分かりいただけたでしょうか。
ぜひ、あなたも心理学「脳」を知り、人気のコンテンツを生み出してください!