旅行会社の新人が最初につまずく「旅行実務の全体像」とは?

旅行会社に入社した新人は、短期間で多くのことを覚えていきます。
商品知識、システムの使い方、お客様対応、予約・手配、見積、社内ルール……。
配属されれば、先輩社員から実際の業務を一つずつ教わりながら仕事を覚えていくことになります。
ところが、新人を育成していると、
「一つひとつの作業はできるようになってきた。でも、仕事全体がまだ見えていない」
という状態になることがあります。
私は旅行業界で約30年間、営業やマネジメント、人材育成に携わってきました。
その経験から、新人が旅行実務を学ぶ際に最初につまずきやすいポイントの一つが、個々の業務と旅行全体のつながりが見えていないことだと感じています。
旅行会社の仕事は「点」ではなく「線」でつながっている
例えば、お客様から旅行の相談を受けたとします。
まず、お客様がどのような旅行を希望しているのかを確認します。
目的、日程、人数、予算、行き先、交通手段、宿泊条件など、確認すべきことは数多くあります。
その情報をもとに旅行を企画し、交通・宿泊・食事などを手配する。
さらに原価を確認し、販売価格や利益を考え、必要な確認や調整を重ねながら旅行当日を迎えます。
大きく捉えれば、
相談
↓
ニーズ・条件確認
↓
企画
↓
手配
↓
原価・見積
↓
確認・調整
↓
旅行の実施
という一連の流れがあります。
つまり旅行会社の仕事は、それぞれ独立した「点」ではありません。
前の仕事から情報を受け取り、自分の仕事を行い、次の仕事へつないでいく「線」の仕事です。
新人は自分の担当業務から仕事を覚える
一方、実際のOJTではどうでしょうか。
新人が手配部門に配属されれば、予約や手配の方法から覚えるでしょう。
営業に配属されれば、お客様対応や営業活動について教わります。
店頭であれば、接客や予約端末の操作などから始まるかもしれません。
これは当然のことです。
配属された以上、まず担当業務を覚える必要があります。
しかし、自分の担当業務だけを見ていると、
「なぜこの情報が必要なのか」
「この仕事の前には何が行われているのか」
「自分が間違えると、その後の仕事にどんな影響があるのか」
まで理解するのは簡単ではありません。
「作業」はできても「仕事」が分からない
例えば先輩から、
「この項目は必ず確認してください」
と教わったとします。
新人は言われた通りに確認するでしょう。
しかし、「なぜ確認するのか」を理解していなければ、それは確認という作業を覚えた状態です。
その情報が、
「この後の企画に必要だから」
「正確な見積を作るために必要だから」
「手配ミスを防ぐために必要だから」
「旅行を安全に実施するために必要だから」
と理解できれば、同じ確認でも意味が変わります。
作業の目的と、その先への影響が分かって初めて、仕事として理解できる。
私は、新人教育ではこの視点がとても重要だと考えています。
旅行会社の仕事は「情報をつなぐ仕事」でもある
旅行会社では、多くの人が一つの旅行に関わります。
お客様から聞いた情報を営業担当だけが持っていても、旅行は実施できません。
企画する人、手配する人、関係する交通機関や宿泊施設などへ、必要な情報を正確につないでいく必要があります。
つまり、
自分の仕事が終われば完了
ではなく、
次の人が仕事をしやすい状態にして渡すところまでが自分の仕事
と考えることができます。
これは旅行会社で働くうえで、新人のうちから持っておきたい視点の一つです。
原価や利益も「自分には関係ない」ではない
もう一つ、新人のうちに知っておきたいのが、旅行ビジネスとしての視点です。
例えば手配担当であっても、交通費や宿泊費などの原価は旅行商品の価格につながっています。
営業担当であっても、売上だけではなく、そこからどれだけ利益が生まれるのかを考える必要があります。
新人の段階で細かな原価計算や高度な収益管理まで習得する必要はありません。
ただ、
「旅行には原価があり、会社は価値を提供することで利益を生み出している」
という基本的な構造は理解しておきたいところです。
自分が行っている一つひとつの仕事が、お客様への価値提供と会社の事業の両方につながっているからです。
最初に全体像を見ると、配属後の学びがつながる
では、新人に旅行実務の全体像を理解してもらうにはどうすればよいでしょうか。
私は、実際の旅行に近い一つのケースを使って、
相談 → 企画 → 手配 → 原価・見積 → 実施
までを一度体験してもらう方法が有効だと考えています。
例えば、
「20名の社員旅行を2泊3日で企画する」
というケースを設定します。
お客様に何を確認するのか。
どのような旅行を組み立てるのか。
何を手配する必要があるのか。
どのような原価が発生するのか。
安全に旅行を実施するためには何が必要なのか。
一度でも全体を経験しておけば、配属後に個別の仕事を教わったとき、
「研修でやった、あの部分だ」
と自分の現在地を確認できます。
新人研修ですべてを教える必要はない
ここで大切なのは、新入社員研修だけで旅行実務を完成させようとしないことです。
旅行会社の仕事には、経験しなければ身につかないことが数多くあります。
だからOJTが必要です。
新人研修の役割は、現場の代わりになることではありません。
現場で学ぶための準備をすること。
その一つが、仕事の全体像を理解しておくことだと考えています。
「全体を知る」から「自分の仕事を深く学ぶ」へ
旅行会社の新人教育では、
まず全体を見る。
そして配属後、自分の仕事を深く学ぶ。
この順番を意識してみてはいかがでしょうか。
全体像が分かっていれば、自分の仕事だけでなく、他部署との連携やお客様への影響も考えやすくなります。
そして、
「何をするか」だけでなく、「なぜするのか」が分かる新人へ。
それが、その後の成長を支える土台になると私は考えています。
2027年度 旅行業界の新人教育をご検討の皆さまへ
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一つの旅行ケースを使いながら、
お客様の要望確認 → 旅行企画 → 手配 → 原価・見積 → 安全・確実な旅行実施
までを体験します。
目的は、旅行実務を1日ですべて身につけることではありません。
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